医者がムカついてはだめですか?
2013年1月5,6日はPIPC広島セミナーに参加してきました.
PIPC(Psychiatry in Primary Care)は,2002年から米国内科学会(ACP)総会において,毎年開催されている教育プログラムで,内科診療の中で精神科的・心療内科的・心理的な問題に直面したときに適切に対応できるように,内科診療の現場における精神科疾患の診かたを伝えるセミナーです.2005年より,井出広幸先生がセッションに参加し,PIPC考案者のSchneider先生より,日本でのPIPC全面展開を承認されました.
PIPCホームページ
PIPC研究会事務局では「学校へいこう」というプロジェクトを行っていて,
これまで高知大学,順天堂大学,福島県立医科大とまわり,今回の広島大学開催となりました.
僕は2年前の熊本,昨年の福岡と続き,3回目の参加.
今回はアシスタントとしてちょっぴりお手伝いしてきました.
初日のプレセミナー「医者がムカついたらダメですか?」は,
2年前熊本でも聞いたのですが,2回目ということもあり,頭の中を整理しながら新しい発見を得ることが出来ました.
今思えば,あの熊本での受講が,「感情労働」という視点から医師のプロフェッショナリズムを考えるきっかけになっていました.
このプレセミナー「医者がムカついたらダメですか?」の内容に興味のある人は,下の寄稿が見開き1ページでサッと読めて分かりやすいので,一読おすすめします.
南山堂 治療 Vol.93 No.3 2-3 (2011.3)
医療を適切に受けるためのポライトネス・ストラテジー(3)
『ムカついている医者を治す処方せん』ください(宮崎 仁)
http://www.nanzando.com/journals/chiryo/909303.php
(追記:Web上で閲覧可能)
Medicina シリアストーク
第7回テーマ 感情と医師研修 (前編)
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/siriasu4207/
第8回テーマ 感情と医師研修 (後編)
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/siriasu4208/
知識を定着させるとともに,ひとつひとつの言葉から,
診療・日常生活を送っていく上で,楽しく生きるヒントを沢山いただいたセミナーでした.
PIPCセミナーでは内科医を精神科にするためのものではなく,
内科医が自分の専門領域において適切な精神科的対応ができるようになるための知識やスキルを,
PIPCオリジナルの『MAPSO』という診療ツールにまとめて提供するという実践的なスタイルになっています.
PIPC関連書籍
http://pipc-jp.com/category/1290459.html
今回も個人的メモをとっているのですが,
このセミナーに参加したことない人は,
受講して「ライブ感」をぜひ味わってもらいたいので非公開で...
話の中で印象に残ったものから,10項目だけ,メモを残しておきます.
興味の有る方はどうぞご笑覧ください(^^)
(1)臨床における「すっきり」と「もやもや」
医師の白衣には2つのポケットが付いている/1つは,習得した確かな知識や技術を入れる答えのあるスッキリとした「確実性」ポケット/もう1つは答えが見つからない,現場のジレンマやモヤモヤとして自分の感情をしまっておく「不確実性」のポケット
臨床医は「すっきり」と「もやもや」の間を常に行き来している.そこにはほとんど感情が関係している.「もやもや」したまま考えつづける勇気を持つ
出典:白衣のポケットの中―医師のプロフェッショナリズムを考える
http://www.amazon.co.jp/dp/4260008072
(2)「GOMER(get out of my emergency room)感情に注意せよ
ここは長崎大学神経内科のマッシー池田先生のHP記事が参考になると思います.
GOMER感情 自分に出すイエローカードで診断リスクを低減する
http://square.umin.ac.jp/massie-tmd/gomer.html
(3)感情労働
感情と看護―人とのかかわりを職業とすることの意味(武井麻子)
http://www.amazon.co.jp/dp/4260331175
武井麻子(日赤看護大学教授・精神看護学)の著作(2001年初版)/我が国ではじめて医療職における感情労働の問題を論じた/「看護婦はなぜ疲れるのか?」(本の腰巻のコピーより)/人との関わりを職業とすることの意味について書いてある/看護師に限らず人と関わる職業の人に読んでもらいたい一冊
医師の仕事は「感情労働」であり,職場の感情規則に照らして,自らの感情を管理しながら働いている/自らの感情と真摯に向かい合うことは,メンタルヘルスに寄与するばかりでなく,患者や周囲の人々に関する全人的理解が深まり,プロフェッションとしてのレベルが高まる
…長くなるので詳しくは上記書籍や,大学図書館などから下記資料をご参照ください笑
南山堂 治療 Vol.93 No.3 2-3 (2011.3)
医療を適切に受けるためのポライトネス・ストラテジー(3)
『ムカついている医者を治す処方せん』ください(宮崎 仁)
http://www.nanzando.com/journals/chiryo/909303.php
(4)コントロール願望,救世主願望
こちらもマッシー池田先生のHP記事をご参照ください
「医者を辞めずに済む方法 」
http://square.umin.ac.jp/massie-tmd/yametaichiryo.html#salvatore
(5)診療というファンタジー
岩田健太郎著『「患者様」が医療を壊す』あれこれ - 日々是好日
http://blog.goo.ne.jp/lazybones9/e/54ef406a427cb4714657c392d92d3852
出典:「患者様」が医療を壊す 岩田 健太郎 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4106036711
(6)画一的なファンタジーはだめ
「100%正しい忠告はまず役に立たない」
http://d.hatena.ne.jp/mursakisikibu/20101005/1286268757
出典:こころの処方箋 河合 隼雄 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4101252246
(7)オンとオフはどちらも一人の人間:お弁当の法則
どういう医者が人気があるのか,重要な法則が「お弁当の法則」である.
一番人気のある医者は昼休みに3階にあがってきてスタッフと楽しく談笑しながらお弁当を食べていた.
オンとオフはどちらも一人の人間
オンに必ず影響している/オフのあなたにどうあるか依存していた
例えば,ある先生が,子供から「おおきくなったらパパみたいな人と結婚する」と言われ,奥さんから「素敵」と言われ,同期・先輩からは彼はグレートだと言われている人が,「さとうさんどうぞ」といったら,この先生は,この後,さとうさんと良い関係を築けるだろうか?
例えば,ある先生が,子供からはそっぽを向かれ,来月は離婚届の判子が迫り,同期・先輩から「さいてーだな」といわれている人が,「オンとオフは俺は切り替えている人だから大丈夫」「さとうさんどうぞ」といったら,この先生は,この後,さとうさんが良い関係を築けるだろうか?
(8)自分との人間関係
人生は人間関係性の中にある/関係性の中でもっとも重要なのは自分のとの関係性/自分との関係性が変わると他者との関係性が変わる/他者との関係性が変わると人生が変わる
国試などが重要なのは仕方がない
あなたのお墓に何と書いてほしいですか?
診療部長と書いてほしいですか?インパクトファクターの数を書いてほしいですか?
誰とふれあい,どういうふうに心溢れるストーリーがあったか,誰を愛して誰から愛されたのか.
関係性が大事
(9)行動を支配する無意識と肯定的宣言(Affirmation)
意識はゆで卵のようになっていて,黄身は深層意識/今日会場にどちらの足から入りましたか?/無意識が行動を支配している/無意識的に自分が創ったプログラムで動いている/〜できるかもしれない,からできたらうれしい/たとえば広島の医療を「変えられるかもしれない」/否定はできない.チームを創ってそれが発展したら,変えられたら嬉しい./仮に「そういった夢を持っていたとして.それに今とりくんでいる最中です」といっても言葉に嘘はない/あなたの潜在意識にあなたが声をかける/潜在意識にとどくのはあなた自身の声あなた自身の言葉です/Self Talk Interconversationが一番重要/それをコントロールしているのは自分.しっかりコントロールしてほしい/自分との関係性を変えよう,自分で自分をどう見ているのか顕在意識を用いて潜在意識を変えていく
(10)自己概念が人生をつくる
事実と解釈は違う/人生は解釈がつくっていく/パーソナリティとは何か?自分は何によって動かされるか?他の人とどういう関係性を作っているか?衝動をどうやってコントロールしていくか?/一番大事なのは「自分を自分でどう見ているか」ということ
愛されたい妻と尊敬されたい夫 エマソン エグリッチ(著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4939018075/
キリスト教の結婚カウンセラーの本
上手くいかない夫婦の大逆転を起こす物語
上手くいかない夫婦でも,unconditional(無条件)にラブ&リスペクトを示すと生き返る
unconditonalに患者さんの喜びをもっと感じよう
あなたの存在が喜びを引き出したということを感じ,そこからあなたの喜びとしてほしい
ユニクロをやっていてもお客さんは店員に喜びをもとめてはこない
医療はそれをもとめてくれる.それができると知ろう
マッチングでどんな病院だとかは変わらない
自分の今眼の前にいる人にそれが出来ることをぜひ知ってほしい
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