インストラクショナル・デザイン(ID)と学習環境設計

【ID x 学習環境設計 x 屋形船セッション】

昨年の8月某日,熊本大学大学院教授システム学専攻(GSIS)同窓会が主催する,「インストラクショナル・デザイン(ID)と学習環境設計」(セミナー+屋形船セッション)に参加してきました.

IDの二大巨匠から学んだとても贅沢な内容でした.セミナーも,屋台船セッションも,二次会のもんじゃセッションも,日常的な経験とは一線を画す,楽しめて忘れられない内容でした.以下,個人的なメモを記載しておきます.

概要

・「向後流・学習環境設計」

 講師:向後千春(早稲田大学 人間科学学術院 教授)

・「鈴木流・学習環境設計」

 講師: 鈴木克明(熊本大学大学院教授システム学専攻 教授)

・「パネルディスカッション:学習環境設計のココロと未来を探る」

 パネラー:向後 千春・鈴木克明

 進 行:仲林 清(千葉工業大学情報科学部教授、熊本大学GSIS客員教授)

・屋形船セッション

「教授システム学」とは,簡単に言えば「教え方のデザイン」.教育活動やコース・教材をシステムとしてとらえ,科学的・工学的にアプローチしようとする教育研究分野です(*1).

*1:熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学專攻

http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/concept/concept_1/

興味のある方は,下のリンクの右メニュー「公開講座」から色々学べます.

http://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/~idportal/

向後先生の教室には,各種テキストが公開されています.

https://kogolab.wordpress.com/class/textbook/

また,iTune U での公開コースも受講可能です.

https://kogolab.wordpress.com/class/itunes-u%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%85%AC%E9%96%8B%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9/

特に印象に残ったところをメモしてます

【メモ】「学習環境設計10箇条(鈴木)」講義と期末試験をやめる(反転授業・学習)/再利用できるものをつくる(教材シェル:LO)/くすぐってその気にさせる(教えない授業)/体験を次に伝える仕組みをつくる(ランチョン)/学習者の文脈を想像する(ユースケース)

【メモ】「学習環境設計」現場で組立てる(オーダーメイドの教育)/手ぶらでは集めない(アクティブラーニング)/今までの要素を再定義して一つだけ付け加える/やるべきことをやる(Practice What You Preach!)/常に最先端の実験場たれ(率先垂範)

【メモ】”私の役割は,つばを飛ばしながら退屈な話をすることではなくて,君たちに「やること」を与えること.学びのきっかけを与えること.そして,やさしく(厳しく)見守ることなのです.自分の知識を見せびらかして学生から「学ぶ楽しさ」を奪うことではなく…(鈴木)”

【メモ】自分で学ばなければならない状況に追い込むことによって自分で学力が育つ/自己主導学習(Self-Directed Learning)阻害因子は,「教師がコントロールし,教師に依存させる構造」/教師の果たすべき役割を再検討

【メモ】「出席票を配るくらいなら、大福帳を使おう」不正がしにくい以上の利点.これまでの出席状況;何回休んだのかいつ休んだのかが一目でわかる.皆勤賞を目指そうとする受講生も出てくる.大福帳の一覧性によるところが大

http://d.hatena.ne.jp/kogo/20060724/p1

【メモ】”(ARCSモデルのRと関連して)押し売りはダメだけど,セールスマンにはなりなさい(Keller)”/「やらないと単位はあげないよ」という押し売りではなく,セールスマンのように,学ぶ意味を魅力的に伝え,学習者に喜んで買って(学んで)もらう

【メモ】「授業設計のロケットモデル」学習者のパフォーマンスが悪ければ,コースのデザインが悪い/ロケットモデルのどのデザインが悪かったのか検証して,全体の改善を図る

https://kogolab.wordpress.com/2014/03/05/shokuin-id-02/

【メモ】「スタディスキル テキスト」から/ノートを取るのは授業に集中するため/箇条書きで講義内容を構造化/聞いた内容をコンパクトに要約する/疑問を見つけ内容を発展

https://kogolab.wordpress.com/class/textbook/

【メモ】グループワークの時に,「話しすぎる人」が出てくる問題/これは「指示を明確にしなかった」こちら側の責任で,デザインが良くない/必ずバトンタッチするようにする/質疑応答も「話しすぎる人」対策として,質問カードにして集める

【メモ】グループワーク発表で,「この班が良かったから…」と当てたりしない/当てられる側は”プレシャー”であり,当てられなかった側は,”負けた感”を育む/サイコロ等でランダムに当てて,全体にシェアする

関連リンク

◆マイクロフォーマット

・「セミナーのマイクロフォーマット」:

https://kogolab.wordpress.com/2013/10/14/%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88/

・「最近の私の講演は、いつでもマイクロフォーマット形式を実施して、聴衆が参加できる形式を取っています。」:

http://kogo.hatenablog.com/entry/2015/08/10/230224

◆大福帳

・「すべての授業で大福帳を使おう(出席票を配るくらいなら、大福帳を使おう)」:

https://kogolab.wordpress.com/%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3/%E5%A4%A7%E7%A6%8F%E5%B8%B3/%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%AE%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%81%A7%E5%A4%A7%E7%A6%8F%E5%B8%B3%E3%82%92%E4%BD%BF%E3%81%8A%E3%81%86/

・「大福帳テンプレート」:

https://kogolab.wordpress.com/%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3/%E5%A4%A7%E7%A6%8F%E5%B8%B3/%E5%A4%A7%E7%A6%8F%E5%B8%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88/

◆反転授業にしなくても,学習効果が上がった例

組織における問題解決を主題とするビデオとオンラインレポートを活用した授業実践(「外部リンク」から)

http://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/~idportal/?p=3741

◆Free Rider問題

・”そもそも、Free Riderが発生するとしたら、タスクが軽すぎるのではないか?も検討したらいいし、全員で持ちよらないと完成しないといったタスクや役割分担も工夫してみることですね。”

http://blogs.itmedia.co.jp/tanakalajunko/2015/01/qa.html


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